先生たちに聞いた!「大豆ミート」のこれからの話。

こんにちは、レシピ制作専門スタジオ、クッキングクラス事務局でございます。

最近、何かとテレビやメディアでも話題になることが多い大豆ミート。

大豆ミート(ソイミート)とは、大豆を原材料とした、食べてみるとまるでお肉のような食感や食べ応えが楽しめる加工食品のことです。

野菜だけの食事法、野菜中心の料理、大豆ミートを試してみたいという方も少しずつ増えてきたこともあり、

スーパーマーケットなどでの取り扱いも、数十年、数年前と比べると増えてきました。

そこで今回は、「大豆ミート」のこれからの話と題し、

指宿さゆり先生、スタジオ代表の御二方にお話を伺うことにしました。

まずは先生方に代替肉、大豆ミートとの関りについて聞いてみました。

「もう20年以上前になりますが、日本でも様々な経験を積み、当時、アメリカで料理を学びました。それと同時に現地で実感した欧米食の課題も痛感しましたね。すでに学んでいた和食や精進料理、アメリカのパーティ料理はもちろん、イタリアンやフレンチ、地中海料理、中華や韓国料理、エスニック、インドやネパールなどのスパイス、ありとあらゆる料理を探求し、オーガニックや精進料理など、ジャンルを横断した料理を作ってきました。近年では野菜だけの食事法、野菜中心の料理、大豆ミート料理の人気が高まったこともあり、1200品以上の野菜だけの食事法、野菜中心の料理、大豆ミート料理を作ってきました。その中には大豆ミートを使った料理もかなり多いですね。大豆ミートに関しては、この何年かで、本当に進化しているし、知っている人が増えたと思います。20年以上関わってきたこともあり、レシピ制作などで使いながら、様々な企業、メーカーが製造しているものを試してきました。一部の専門店だけではなく、手軽に購入できるようになるとは、20年前とは違いますよね」

とのこと。大豆ミートが一般的に普及する以前より、試してきたとは驚きですね。

話の中で興味深かったのは、日本だけではなく、海外の動向との比較に関するお話です。

「日本と比べ、海外では圧倒的に「プラントベースドミート(Plant-based meat)」と呼ばれる、植物性由来の商品が人気を集めています。教室を通して、ヨーロッパの方と話す機会もありましたが、やはり、日本との違いを感じました。野菜だけの食事法、野菜中心の料理の認知度や実践している人口も日本と比べ、やはり海外の方がより広く知られているのが一般的ですね」

とのこと。プラントベースフードとは、肉・魚・卵・乳製品のような動物性素材を植物性素材に置き換えた食材、料理のことです。「料理の教養、食の教養は、世界の共通語」という教えの通り、料理を通じたコミュニケーションで、グローバルに会話、対話ができるのではないかと感じました。

「日本の伝統食、精進料理や和食というのは、海外の方には本当に喜ばれます。ホームパーティにイギリス、シンガポールから来日された方が来られたので、日本の和食を中心としたニュースタンダードの料理を提供しました。伝統的な和食のベースは保ちつつ、色んなエッセンスを交えたものを提供したので、日本食の豊かさというか、料理の繊細さに驚いていました。インドやネパールの方とスパイスの話をしたり、ベトナムやシンガポールの方とエスニック料理の話をしたりしますが、色んな国の料理を知ることで、自分自身の料理にも影響を与えてくれますね」

先生に見せていただいたのは、大豆ミートを使った料理のサンプリング写真。ブログ内でもいくつか紹介したいと思いますが、どれも本当に代替肉とは思えないほど、美味しそうです。

さて、日本の場合、大豆ミートが主流ですが、海外では様々な商品が販売されていると教えていただきました。

「商品の工夫も、海外では本当に興味深いですよ。お肉ならではのジューシー感を再現するために、植物油やココナッツオイルなどを添加したり、風味づけのために香料を加えたり。肉々しさを演出するため、ヘム鉄と呼ばれる成分の製造技術も進んでいます。他には肉汁の演出には、ビーツのエキスを使っているものもありますね。肉汁の必要性に関しては、欧米の食生活との関係性も大きく起因していると思います。日本の大豆ミートはどちらかと言えば、シンプルな原材料であることが多いですから。海外の動向を知ることで、日々の料理にも活用できます。ただ、そのまま導入するということはなく、あくまで健康と美味しさのバランスを考えてということは意識していますね」とのこと。

日本国内で販売されている大豆ミートなどの原材料を見ることは少ないので、注目してみたいと感じました。ちなみにビーツとは、わかりやすく言えば、赤紫色のカブのような植物のこと。てんさい糖の原料となるテンサイ(甜菜)の仲間。カブとは別の種類ですが、見た目は似ています。

海外ではプラントベースドミートが急拡大していますが、その背景も聞いてみました。IKEAなどのレストランでもプラントベースの料理が提供されていることもあり、日本でも気になっている方も多いのではないでしょうか。


「アメリカの場合、一番は健康志向で、ジャンクフード、ファストフード、パン食や肉食中心への反動で、肥満の軽減や生活習慣病の予防と言ったことが言えるでしょう。ただ、菜食にすれば、健康なのかどうか、痩せるのかどうかについては、肉食の代替だけではなく、油分や糖質、栄養バランスの点での配慮は必要かと思います。次いで、もう何年も前から社会課題として叫ばれているもの、人口増加の問題、土地や水資源などの節約、温暖化ガスの排出抑制と言ったように、環境問題の意識がかなり高まっていると言えるでしょう。動物愛護を考える人々も増えているというのも言えますね」

とのこと。

海外ではすでに始まっていましたが、日本の外食大手チェーンも代替肉の使用を開始しました。イギリスのバークレイズという企業の試算によれば、世界の代替肉市場は2029年までに10倍の1400億ドル超と、食肉業界全体の1割相当に達する見通しだとか。

今後、日本国内での大豆ミート、代替肉の動向について伺ってみました。

「海外では爆発的ともいえる、プラントベース市場ですが、日本国内では、現時点では緩やかな伸び具合になると思います。その理由として、まず大豆の消費に関して言えば、日本食では豆腐や納豆など、普段からたくさんの大豆を消費しているというのが理由ですかね。調味料も醤油を中心に大豆の製品が多いですし。また、日本人の肉の消費量は、全体的には増加傾向とはいえ、アメリカの半分以下ほど。肉の消費量に反動する形で、アメリカでは普及していったと言えますから。ですから肉の代替としての伸び具合は爆発的にはならないのではないかと。ただ、近年の違いは、やはり、SDGs。SDGs:Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)が今後も認知、広がっていけば、健康や地球環境への配慮などから肉食を減らす傾向にはあると言えるでしょう」

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、2015年9月の国連サミットにて、加盟国の全会一致で採択されたもの。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載され、2030年までに持続可能で、よりよい世界を目指す国際目標のことです。

SDGsのためにも大豆ミート、代替肉の需要が高まっていくことが予想されますが、その広がりをさらに加速するために必要なことは何なのでしょうか。

「大豆ミートや代替肉の魅力を、どれだけ伝えることができるかが大切だと思います。実際に食べてみて、料理に活用して良かったと思えることが必要ではないでしょうか。例えば、大豆ミートを使った料理のレシピを監修するため、再現して作ることもありますが、ヴィーガンの食生活を前提としている場合と、そうではなく、新たに大豆ミートを使った食事に取り組もうとする方では、味の感じ方、食感含めて、微妙な差異があると思うんです。単に流行しているから、肉の代用のためだからと言った理由だけでは、それは一過性の代替にすぎず、食のスタイルとして根付いていくのは難しいのが現実だと考えています。それよりも大豆ミートを使った料理の方が美味しいし、環境にも優しいし、積極的に食べたい、選びたいという方が増えていくことが大切だと思います」

とのこと。確かにインタビュー対象者の周りでも、大豆ミートに関しては意見が二分されているという実感があり、大豆ミートのレシピを見て作ってみたけど、いまいちだったという声も少ない内容に感じます。初めて作った大豆ミートの料理が満足できない場合、継続していくのはかなり困難であるとも感じました。

さて、先生の作り出す大豆ミートの料理は絶品です。大豆ミートの特性を意識したヘルシーであり、それ以上にとにかく美味しいというのがポイントだと感じました。

「教室での相談で多かったのは、パートナーにどうすれば、美味しいと認めてもらえるかというものです。多くは女性がダイエットや美容のため、玄米菜食を始めたいけど、男性の同意、賛同が難しいという課題です。反対に野菜だけの食事法、野菜中心の料理が好きな男性、ヨーロッパやアメリカの方と知り合い、生活していくため、菜食を習得したいという相談も受けることがあります。これは個人差があるので一概には言えませんが、野菜だけの食事法、野菜中心の料理のお店がまだまだ日本には少なく、どのような料理なのか、わからなくて心配というのもありますし、玄米に対して健康と言うより、粗食のイメージが強く、玄米よりも白米の方が好きだという方もいらっしゃいます。それから難しい問題ですが、そもそも料理が苦手だという方の場合。料理の基礎があったうえで、代替した料理が可能なわけですから、料理の基本をマスターしていただく必要も出てきます。そのためにはやはり、広い視野で、料理やグルメの探求、学びが必要だと思います。できることなら、パートナーと一緒に、美味しいと思える食生活を実践して欲しいと思っています。だからこそ色んなお店を巡ってきました。どうすれば、美味しいと感じるか、この研究に注いできたと言っても過言ではないですね」とのこと。

最後に大豆ミートの使い方について、少しだけレクチャーいただくことにしました。

「乾燥タイプとそのまま使えるタイプがありますが、乾燥タイプはお鍋にたっぷりの水を入れ、大豆ミートを加え入れて湯を沸かし、弱火から中火で5~7分ほど茹で戻しをします。ザルにあげてから水洗いをし、水気をよく絞ってから使います。シンプルに解説すれば、これでオッケーですし、メーカーが提供している使用方法も、だいたい、このような感じでしょうか。ところが、大豆ミートが苦手だと感じる人の意見を聞いて感じたのは、大豆特有の香りが気になるというもの。本来なら湯で戻し、水気を切ったら使えるのですが、水洗いと搾りを2~3回繰り返すというのを推奨しています。これに加え、料理に展開するため、下味を付けるというのもおすすめですね。お肉の代替にするというのがゴールではなく、やはり、大豆ミート、プラントベースフードにして美味しかったと言ってもらえるのがいいですよね」

先生のレクチャーはシンプルかつわかりやすいです。しかも、熱のこもった解説はこれだけでは終わりませんでした。

「大豆ミートの活用法として、習得いただきたいのは、味付けや調理の創意工夫です。例えば、肉みそ風。お気に入りの味噌で、濃いめの味付けにすることで、男性でも満足できる味に仕上げることができます。肉みそ風を作るだけに終わらず、その肉みそ風を、どうやって料理に仕上げていくかが、今後のカギとなると感じています。ジャージャー麺のルーツは諸説ありますが、豚のひき肉や豚肉を細かく刻んだものを黄醤と呼ばれる豆味噌や甜麺醤などで炒めたもので、まずは、この食や料理の背景や全体像を知っておく必要があります。油で炒めつつ、濃いめの調味料で味を付けていく。これまでは肉食を菜食に、単に代替するというのが主な目的だったように感じます。菜食に親しんでいる人だけではなく、これから野菜だけの食事法、野菜中心の料理、1週間のうち、数日だけ玄米菜食と言った人の場合、特に料理や食への理解によって、真価が問われていく時代になると思います」

こちらは先生の試作された大豆ミートのジャージャー麺風。単に大豆ミートの肉みそをかけるだけではなく、ジャージャー麺の本格的な料理を習得されているからこそ、本当に美味しい大豆ミートの料理が完成するのだと感じました。

いかがだったでしょうか。

大豆ミートに関する様々な視点でのお話は本当に興味深いですし、これからどのようなことが必要なのか、習得していく必要があるのか、知ることができました。代替するだけではなく、新たな価値、美味しい料理を求めていくという姿勢に感銘を受けました。

先生方、御多忙の中、本当にありがとうございました。

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◆指宿さゆり先生について

神戸出身。日本やアメリカなどでパーティ料理やオーガニックを学び、2002年に「菜々食CookingClass」を主宰。これまでに多くの卒業生を輩出し、東日本から西日本まで幅広いエリアで料理教室が開設され、カフェなどの開業実績も多数。

「レシピ制作専門スタジオ」では料理部門の代表として、オリジナルレシピ開発、連載レシピ記事、料理動画のメニュー監修、大手家電メーカーとのタイアップ企画、飲食店のメニュー開発などに従事している。

◆レシピ制作専門スタジオ/菜々食クッキングクラスについて

2002年より神戸の新しいお料理教室として、オーガニックの要素を取り入れオリジナルの料理やパーティー・おもてなし料理を提案。レシピ制作専門スタジオでは、企業向けのオリジナルレシピ開発、タイアップ企画レシピ、連載レシピコンテンツ、料理動画コンテンツ、飲食店のメニュー開発などを提供中。

◆野菜だけの食事法、野菜中心の料理の実績

2002年より20年近い経験、各ジャンルの料理をベースにしたヴィーガン料理を提供。

これまでに1200品をこえる野菜だけの食事法、野菜中心の料理を制作、監修、料理撮影の実績有。

【Mail】recipeibusuki@gmail.com

【Twitter】 https://twitter.com/SaishokuCooking

【アメブロ】https://ameblo.jp/saisaishokucookingclass

【Facebook運営】「究極の料理・至福のグルメ】作って食べたりグルメを紹介したり!」https://www.facebook.com/groups/240256206104363

IBUSUKI SAYURI

2002年に料理教室を開講。ジャンルレスのオリジナルの料理やパーティー・おもてなし料理を提案しています。現、レシピ制作専門スタジオ。

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